2010年11月22日月曜日

未DVD化 その6

ブッチャーボーイ(1998年 アイルランド)

一部で非常に人気の高い作品・・だけど未DVD化(allcinema selectionに登場するのを期待)

VHSのパッケージのようなシーンは映画では登場しない。これだけを見るとブタのお面をかぶったシリアルキラーの少年が出てくる話?という印象があり、ホラー映画?という誤解を受ける恐れもある。怖いシーンは一部(ホラーやスプラッターの類いではない)。悲惨な境遇からの逃避は暴力的な側面とユーモアを備えた明るい気質を主人公に宿し、心のバランスを危ういながらもなんとか保持する役目を担っていた。次々に降りかかる災難をなんとか乗り越えてゆくが・・・どうにもならない事実に直面したとき、その根本原因を破壊する衝動へと変わっていく・・・(北米版DVDのジャケットは火のついたバクダン頭の人が走っている絵)。本来であれば主人公の明るい性格(そう振る舞っている)が更に悲しみを増すはずなのに、面白く愉快なタッチで終止描かれているという点が本作を力作といわしめている由縁だろうか。ファンタジー要素を入れて悲惨な話をブラックコメディにしている点は中島監督の”嫌われ松子の一生”にも通じるものがあるのではないだろうか。




















1962年、キューバ危機で共産主義者(コミュニスト)によって、あわや核戦争かといわれた頃のアイルランドの片田舎が舞台。そのキューバ危機を救ったのはアイルランド出身の移民であったケネディ大統領(カトリックで唯一)。またアイルランドの反英(イングランド)感情というのは、最近でこそ少しは薄らいではいるかもしれないけれど、映画の舞台である当時は相当に根深いものだったと思われる。英国帰りの富裕なニュージェント婦人への嫌悪感やアイルランド独立運動の指導者マイケル・コリンズの同志と嘘ぶく更生施設の用務員ジミーへの信頼にも見てとれる。

少年にしか見えないマリア様役をプリンスのカバー曲で一世を風靡したシンニード・オコナー(シネイド・オコナーが現在の表記)が演じている。彼女はこの映画の6年前アメリカのTV番組で起こした一件(ローマ教皇の写真を真の敵と言って破る)の方が有名かもしれないが、その事件を起こす一つの要因は両親の不仲、事故による死別、厳格なカトリックへの反発などこの少年の境遇と重なるところにあるのかもしれない。映画でマリア様役を演じた翌年に独立カトリック教会系の新興宗教教団の女性司祭になっていることも興味深い。

信じるものが完全に崩壊することで粗暴だが無垢な少年が狂気へと向かう姿は多少なりとも理解できる。それがある側面からは身勝手で周囲の常識を無視したものであっても、本人には義になるのかもしれない。

当映画と同じパトリック・マッケーブ原作 女子の心を持つ青年のコメディ”プルートで朝食を”、IRAを背景にした”クライング・ゲーム”、独立運動の英雄を描いた”マイケル・コリンズ”とニール・ジョーダン監督の作品は祖国アイルランドへの厳しくも優しい視点の作品が多く、当然ながら本国での評価も高いようだ。 


少年の回想を本人のナレーションで進行(たまに少年がツッコミを入れたりもする)していくスタイルは好みの別れる演出かもしれないが、原作もそうなっているそうなので忠実といえる。


勝手な点数 ★★★★★★★★☆☆
未DVD化の要因  神戸の事件の影響で全国公開になっていないようだが、ビデオが2000年に発売されている以上DVD化は問題ないと思われるが・・・?

監督 ニール・ジョーダン
制作 Geffin Pictures
配給 Warner Bros.
全米初公開年 1998年1月
販売元 ワーナー・ホーム・ビデオ 
レンタル開始日 2000年2月11日

ミニシアター系での公開のみ (場所は?)

時間 110分
海外DVD発売年 R15

2007年1月 (Warner Home Video)
                   2月 (Warner Home Video Widescreen)
2008年8月 (Warner Home Video Widescreen)

<参考文献リンク>

腐ト 79  / a 80
BOM
Var
aco IMDb Wikipedia直含む)


アマゾン(数字はレビュー数)

ブッチャー・ボーイ【字幕版】 [VHS]  2000円

ブッチャー・ボーイ【日本語吹替版】 [VHS] 1円
c 67
d 2
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なお、サントラを担当したエリオット・ゴールデンサール氏はスクウェアの黒歴史である映画”ファイナルファンタジー”のスコアを担当している。

悲惨なストーリーと対照的に映画の中で使われている楽曲はトラディショナルで印象深いものです。

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